
| 月の公転と自転のはなし |
公転周期と自転周期の一致
月は、地球の周りを平均約27日かけて公転し、同時に1回の自転をしているため、地球にはいつも同じ方向を向けているということになります。(公転周期=1恒星月=約27.32日)ですから、地球にいる限り、月の裏側を見ることはできないわけです。左手を握って、右手で指差しながら一回転しようとすると、手がよじれてしまいます。これを考えればこのことが分かると思います。
公転周期と自転周期が一致している衛星は珍しいかというと、そうではありません。むしろ一致するものがほとんどです。火星の2つの衛星、フォボス、デイモスも自転と公転は一致しています。木星の衛星のイオ、エウロパ、ガニメデ、キャリスト、アマルテェア、土星の衛星のミマス、エンケラドゥス、テェティス、ディオネ、レア、ティタン…なども自転と公転は一致しています。
首ふり運動
公転周期と自転周期が一致している以上、裏側は見えないということになりますが、実際は100%見えない、というわけでもありません。後ろで述べますが、月の公転軌道はかなり不安定で、またその速さも厳密には一定ではなく、更に、月の赤道面はその軌道面(白道)に対し6.67°と、やや傾いて公転していることで、月は朔望周期で揺れる感じに観測されてしまうのです。よって、時期によっては、いわゆる裏の一部分まで見えてしまいます。更に、地球と月の間の距離は、ほかの天体を見るのと違ってかなり短いために(赤道半径の60倍程度)、観測者が地球の中心(地心)から見ていないことが見え方にかなり影響します。このような月の観測上の揺らぎのことを、月の光学秤動(幾何学的秤動)ないし、「首ふり運動」と言っています。実際は、月の表面の約6割を地球で観測することができます。
不安定な公転軌道
月の楕円軌道における離心率は、地球以外にも、太陽などの影響を強く受けていて一定ではなく、このため公転の速度も一定ではありません。
地球は、地軸をずっと同じ方向へ向けて自転しているかというとそうではなく、天の北極は黄道北極を中心に半径23.6度(つまり地軸の傾き角度)の円周上を25,920年かかって1周しています。 北極星は、現在天の北極にあるから「北極星」なのであって、あと1万年も過ぎれば、ただの星になってしまいます。(12,000年後にはこと座のヴェガが北極星になる。)コマの首振りのようなこの運動のことを「歳差運動」と言います。
月の自転についても、この歳差運動があり、このことは周期をともにする公転にも大きな影響を与えています。太陽の見かけの軌道すなわち黄道と、月の見かけの軌道の白道が2点で交わっていて、この点が、周期18.6年で同じく公転方向に一周していますが、これによって定点のはずのポイントがかなりずれていきます。(サロス周期,「日食と月食のはなし」参照)
更に、楕円の長軸の方向は、8.85年で公転方向に一周していますので、楕円は周期的に歪みます。また、地球上の海水は陸部との摩擦により、地球の自転速度を下げる要因になっているので、その反動を受けて、月の軌道自体が1年に3cmほど長くなっています。
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これらの関係を正確に把握して、厳密に月の動きを把握することは大変難しいことです。なお、月の軌道を単純に円で近似して、平均の角速度で動いているものと仮定すると、実際の軌道からは角速度にして6°以上のズレを生じてしまうと言われています。これを月における「中心差」と言います。 |
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公転基準のいろいろ
というわけで、月の公転周期は、基準となる方向をどこにとるかで、かなりの差が出てきます。新月、満月の周期を基準にした朔望(さくぼう)月は、約29.53日、不動とされる恒星の方向を基準とした恒星月は約27.32日、この二つがよく使われますが、歳差で動く春分点※の方向を基準とした分点月(約27.32日)、中心差を基準にした近点月(約27.55日)、サロス周期の昇降交点を基準にした交点月(約27.21日)など、いろいろあります。当然、この数字も、年によって少しずつ異なってきます。
※ 春分点とは、太陽の見かけ上の通り道である「黄道」が天の赤道を南から北にかけて横切る点のこと。太陽がこの点を通ると太陽黄経は0度となり、この時を春分と言う。
それでも、概略を語る上では、月の公転軌道を離心率0.055の楕円に近似して構わないのですが、精密な計算をする時などは、ディテールがだいぶ粗末になってしまいますから、それぞれの用途で基準公転周期を使い分けます。
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